シナリオタイトル：【機動戦士アイドルマスター】
作者：燕雀 氏
概要：
THE iDOLM@STER（以下アイマス）のキャラクター達を機動戦士ガンダムシリーズのシナリオに絡めた長編。１１人のアイドルそれぞれにシナリオが想定されているが、現行でプレイできるのは天海春香編（全24話完結）と星井美希編（現行2話まで）。
ここでは天海春香編のレビューを記すことにする。
どんなシナリオか？：
いわゆるアイマス架空戦記と呼ばれる二次創作作品の内の一つ。
大きな特徴は、アイマスのキャラ（以下アイドル）達がガンダムの世界観である宇宙世紀にそれぞれの背景をもって生まれ育っていることである。
アイドル達にアイマス本編にはなかったキャラクター背景が付与されているため、最初は違和感を受けるものの、プレイしている内に「このシナリオの中におけるアイドル達」としてのキャラクター付け、ストーリー性が見事に描かれていることに気付かされる。
ストーリー：
序盤はガンダム側のシナリオに忠実な分、アイドル達の活躍は控えめである。
面白くなってくるのは中盤以降。アイドル達が敵味方に分かれ、十重二十重の重厚なドラマを演じてくれる。特に、アイマス本編でもライバル的存在だった天海春香と如月千早の邂逅と対決、和解の一連のストーリーの流れは秀逸である。
その後もアイドル達とガンダムシリーズの登場キャラ達がお互いに影響を与えながら物語を紡いでいく。
ゲームシステム：
ゲームシステム自体は初期のスパロボを想起させる非常に単純なもの。ローカルシステムもHP成長とZOC設定くらいしか用いられていない。
そのため深く考えずにサクサクと遊べる一方で、全体としては少々アンバランス。
よくいえばシンプル、わるくいえば大味な戦闘といえる。
キャラクター毎に乗機が決まっており、撃墜数に応じて新しい機体が手に入るのは面白い。
ただし、ガンダム本編への影響を抑えた分、似たような機体が揃ってしまう傾向がある。
演出：
演出は黒バックに白文字テロップが出る程度で、非常にシンプル。
テキストの出来が優秀なので、余計な演出に気をとられないのがよい。
総評：
非常にストーリーテキストがよい。アイマスを十分知らなくても、この作品からアイマスの世界に入っていくこともできるのでは無いだろうか。ガンダムをベースにしている分キャラクター改変もしばしば見受けられるが、根幹の部分はちゃんと貫けていると思う。アイマスの二次創作群はややコメディタッチに寄ってしまうものが多いのだが、このシナリオでは相当シリアスにこだわっている。前述の千早絡みのストーリー、最終話近辺における星井美希周辺のストーリーは特によい。
一方で戦闘はかなり単調で、作業的に感じてしまう部分も多い。もう少しユニット性能、キャラ性能がエッジの効いたものになっていればよかったのだが……。ただ、見方を変えれば、特殊なシステムを積んでいない分、気楽にプレイできる、ともいえる。
結論としては、優秀なストーリーを観たいがためについつい先に進みたくなるゲーム、というのが適当だろう。
