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マルチクラス制の不具合とハウスルールの提案

D&Dのサプリは驚くほど多く、そこに収められている追加クラス、上級クラス(プレステージクラス)も数多である。この環境下で、一つのクラスだけをひたすら上げ続けるプレイヤーは少ないのではないだろうか。
さて、D&D3rd(3.5E)においては、複数のクラスを取得した場合、単純にそのクラスの能力が加算されることになっている。ヒットポイント、基本攻撃ボーナス、基本セーヴィングスローボーナスなどなど。ヒットポイントは別に問題ないが、基本攻撃ボーナスと基本セーヴィングスローボーナスに関しては難点がある。
基本攻撃ボーナスは文字通り攻撃ロールの基礎になる数値であり、これが高いことが戦士系クラスのアイデンティティでもあるし、各種特技の取得条件にもなっている。さて、これが問題なのだが……基本攻撃ボーナスには、クラスによって3種類の値が存在する。良好→クラスレベル毎に+1、標準→クラスレベルの3/4(端数切捨て)、劣悪→クラスレベルの1/2(端数切捨て)、である。
プレイヤーズハンドブック所収の基本クラスでは、良好→ファイター、バーバリアン、パラディン、レンジャー、標準→クレリック、ローグ、ドルイド、モンク、バード、劣悪→ウィザード、ソーサラーとなっている。
良好なクラス同士でマルチクラスする分には、特に問題は無い。例えば、ファイターとバーバリアンをマルチクラスする場合などだ。この場合は、基本攻撃ボーナスの値はファイターレベルとバーバリアンレベルの単純な加算である。
しかし、これが標準のクラス同士になると、難点が生じる。計算が単純な加算でかつ端数が計算前に切り捨てられるため、マルチクラスをすればするほど基本攻撃ボーナスが減少してしまうのだ。
例として、クレリックとローグのマルチクラスの場合を考えてみる。クレリック2レベル、ローグ2レベルのキャラクターの基本攻撃ボーナスはいずれも、2×3/4→端数切捨てで+1である。しかし、クレリック1レベル/ローグ1レベルのキャラクターの場合、基本攻撃ボーナスは(1×3/4、端数切捨て)×2、つまり±0になってしまうのである。もし仮にこのままドルイドやバードなどを1レベルずつ取得していくと、レベルは上がるものの基本攻撃ボーナスは全く上昇しないという現象が発生する。基本攻撃ボーナスがキャラクターの相対的な実力を表しているものと考えると、この現象はいささか不合理であるように感じる。
この問題は上級クラスを取得するときにも浮上する。上級クラスは、マルチクラスキャラクターにかかる経験点ペナルティ制限を受けないという点以外においては、通常のマルチクラスと同様に扱われるからだ。
最も身近に感じるのは、ダンジョンマスターズガイド所収の上級クラス、アサシンの場合だろう。このクラスはその能力と前提条件から、ローグからクラスチェンジするのが王道である。最速ではローグ5レベルで前提条件を満たせるので、6レベル目からアサシンのクラスレベルを取得できることになる。
しかし、前述のルールにより、基本攻撃ボーナスは、ローグ6レベル→6×3/4(端数切捨て)=+4になるのに対し、ローグ5レベル/アサシン1レベル→5×3/4(端数切捨て)+1×3/4(端数切捨て)=+3となり、アサシンの方が攻撃が当たりにくいという現象が起こってしまうのである。
アサシンはほぼNPC専用クラスであるが、アサシン同様に「標準」の基本攻撃ボーナスをもっている上級クラスは非常に多い。そして、それらを習得する際にはこの問題が必ず浮上する。基本攻撃ボーナスを下げずにマルチクラスするためには、基本攻撃ボーナスが「標準」のクラスは4の倍数レベルとるというのが理想になるわけだが、それはあまりにメタゲームにすぎるのではないだろうか。
次に基本セーヴィングスローに関してであるが、これにも難点がある。まず第一に、セーヴィングスローには良好と劣悪の2種類しか値が存在せず、その差は大きい。1つのクラスを20レベルまで上げた場合、良好なセーヴは+12、劣悪なセーヴは+6になる。これだけでも十分差があるのだが、マルチクラスを行うとこの差がさらに酷くなる可能性がある。
例えば、ファイターを10レベル、バーバリアンを10レベルとると、そのキャラクターの基本セーヴの値は頑健+14、反応+6、意志+6となる。ファイターまたはバーバリアンのみを20レベルとった場合は+12/+6/+6になるため、頑健セーヴを+2得している計算になる。セーヴに+2というのは特技1つ分に相当するので、この差は意外に大きい。
このように、基本攻撃ボーナスと基本セーヴのルールは、マルチクラスを重ねるとバランスが悪くなってくるという問題点を抱えている。デザイナー側の意図としては本来マルチクラスは特殊な選択であったため、熟慮されなかったのだろう。しかし、多くのサプリが発売され、選択肢の増えた現環境ではマルチクラスキャラクターは別段珍しい存在ではない。
そこで、この基本攻撃ボーナスと基本セーヴの問題についてハウスルールを提案してみたい。それは、基本攻撃ボーナスと基本セーヴの計算の際、同じ強さ(良好、標準、劣悪)のボーナスに関してはそれを有するすべてのクラスの分を、1つのクラスを取得した場合と同じように計算することである。こうすれば、頑健セーヴは+10を超えているが意志セーヴは±0の戦士系キャラなどは生まれないはずである。
4版ではこの辺りが整理されているとよいのだが……