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D&Dにおける軽戦士考察

重戦士と軽戦士という概念がどこで生まれたのかよくは知らない。ドリッズド・ドゥアーデンは軽戦士だと思うのだが、ということはAD&D1stの頃にはもうあったのだろうか。そういえばコナン・ザ・グレートは鎧を着てなかった気がする。あれは軽戦士だろうか? なんか違う気がする*1(笑)
ともあれ、日本人的には、軽い鎧を着て、敵の攻撃を素早い身のこなしで回避し、一撃を決めるというのが軽戦士スタイルとして定着しているようだ。つまり、「避ける」戦士である。あんまり筋肉がついているのも受けないらしい(笑)
こないだD&Dをやったときに、クレリックのプレイヤーが「ビジュアル的な理由で」ブレストプレート(中装鎧)を選択していた。フルプレートフェチの私としては少し釈然としないものがあったが、ゲーム的な強さだけを追及すると定石に固まってしまうので、そういう遊びは嬉しいとも思う。ただ、ブレストプレートはミスラル製でもない限り、バーバリアン以外のクラスが着る意味は金の問題だけで、強い鎧では無い。まさに趣味の領域である。
しかし私もちょこちょことイラストを描いたりするタイプの人間なので、そういう趣味志向を全く理解しないわけではない。むしろ、イメージに合ったキャラを作るために、ルールブックやサプリメントを漁りまくるのを大変好んでいる。

さて、重戦士と軽戦士を分けるのはまさにこのビジュアル的側面によるものが大きく、そしてそれはメイン防具であるところの鎧で分かれると思うのであるが、D&Dにおいて深く考えずにビジュアル面を追い求めるのは危険行為である。何故か? 簡単な話だ。その答えは、はるか以前より変わっていないアーマー・クラス(AC)という概念である。
D&Dにおいて、ACは鎧、盾、敏捷力ボーナス、その他の修正値の累積値である。そして、これが相手の攻撃の目標値になる。つまり、当たったか外れたかは、相手の攻撃ロールがACに届いたかどうかで決まるのである。そして、どんな防具を着ていようがダメージは全通しである*2。フルプレートを着込んでいようと、ボロボロのパデッドアーマー1枚であろうと、1d8ダメージは1d8ダメージなのだ。

D&Dは当たるか当たらないかのゲームであって、「避ける」ゲームではないし、防具は基本的にダメージを減らしてくれない。そういうゲームなんだよ、諦めてくれ(笑) そのため、ダメージを受けない=強いキャラを作るためには、もっぱらACをトータルとして伸ばすことになる。
ACを上げる最も早い方法は鎧と盾を着けることである。1レベル時点で取得できる最も強い鎧は恐らくスケイル・メイルなので、これにヘヴィ・シールドを加えてAC16というのが初期のACになるだろうか。
実際には、敏捷力ボーナスもACに加算されるので、重戦士系キャラの初期ACは16〜18くらいになるだろう。フル・プレートが取得できれば、これと盾だけでACは20になる。攻撃力を犠牲にしても構わないというのであればタワー・シールドを着けるという手もあり、これならACは22である。
ちなみに、フル・プレート着用時にはACに入る敏捷力ボーナスは+1に制限される*3ので、魔法のアイテムの助けなしには、重戦士系のACは21/23が最高ということになる*4
ビジュアル面を重視して軽装鎧ないし中装鎧で済ませようとすると、ACがかなり苦しいことになる。まず、中装鎧で最強のブレストプレートから。この鎧は鎧ボーナスが+5で、着用者の敏捷力ボーナスを+3まで許容する。つまり、いくら素早くても、合計で+8が限界になってしまうのだ。フル・プレートは+9である。しかも、こちらは敏捷力ボーナスは+1しか入れてない。敏捷力のキャラでも、重装備をすればAC→回避力であり防御力は十分得られるのである。
軽装鎧で最強なのはチェイン・シャツであるが、これも鎧ボーナス+4で敏捷力ボーナス上限+4、合計で+8までしか行かない。それより軽い鎧も、敏捷力ボーナス上限が増えると鎧ボーナスが増えるといった具合で、AC合計は+8までである。唯一パデッド・アーマーだけは鎧ボーナス+1で敏捷力ボーナスを+8まで許容するが、そもそもキャラメイク時の最高敏捷力ボーナスは+5なので、全く話にならない。まあ、いくらなんでも「着ているとすぐに暑くなり、汗、垢、ノミ、シラミだらけになるのが欠点である」鎧を好き好んで着るビジュアル重視のプレイヤーもいるまい(笑)

次はクラスの話をしようと思う。鎧の種類とその特徴を上に示したが、それが着れるクラスと着れないクラスがある。まず、ファイター、パラディンクレリック。この3つのクラスは最初からほぼ全ての鎧と盾*5を装備できるので、典型的な重戦士系クラスである。もちろん敢えて軽い鎧を着て高い敏捷力で避けるという手もあるが、能力値配分において、これらのクラスは敏捷力に高い値を回す余裕が無い場合が多いので、もっぱら重い鎧を着ることになる。ただし、軽い鎧は移動力を落とさないので、メリットが無いわけでは無い。
次にバーバリアン。バーバリアンは移動力にボーナスが入る特殊能力があるが、軽装/中装鎧着用時にしか入らない。よって、バーバリアンは敏捷力がある程度欲しい*6。バーバリアンは移動力の上昇により、軽装鎧を着るメリットが高くなるクラスなので、敏捷力の高いバーバリアンを軽戦士と呼んでいいかもしれない。ただ、hpが高く、激怒能力で攻撃力を上げて暴れるキャラなので、スマートなイメージを持ちにくいかもしれない。
ローグは、基本的に探索、偵察キャラと思われがちだが、Sneak Attack(急所攻撃)能力の威力が強烈なため、肉体系に十分高い能力を次ぎこめば、戦士として活躍が見込める。急所攻撃の威力は本当に強烈で、同レベルの戦士系キャラの攻撃をはるかに凌駕することさえある。難点は、序盤はあまり気にならないのだが、基本攻撃ボーナス(BAB)が並みであること。そして、hpを決めるヒットダイスが小さいことと、軽装鎧しか着れず、さらに技能へ入る鎧ペナルティの関係でAC+3の高品質スタデッド・レザーに頼ることになるため、前線に出ると非常に死にやすいことだろう。また、イニシアチブが決まった後に急所攻撃を決めようとするためには他のキャラクターとの連携も不可欠で、一人で前線を受けて立つというわけにはいかない。
レンジャーは一番イメージ的に軽戦士だろうか。二刀流か弓術のスタイルに特化していき、それらは軽装鎧を着ていないと発動しない、というキャラである。軽戦士の定義が軽装で剣を振るキャラクターだとすれば、弓スタイルレンジャーはそれに該当しない。そして、二刀流レンジャーはhpも鎧も薄いので、ローグほどでは無いが、これまた死にやすい。
モンクはモンクに始まりモンクに終わる。っていうかモンクって「軽戦士」じゃないよね?

とりあえず基本クラスから書き出してみた。最初のクレリックは戦士じゃないような気がするが……単発のクラスであれば、一番軽戦士のイメージが強いのは軽装+一撃必殺のローグと、軽装二刀流のレンジャーだろう。想像力が許すならバーバリアンもよい。激怒の効果を活かすため、武器が両手武器*7にほぼ限定されてしまうのが難点だが。
どうにもスマートな軽戦士が作れない。そういうときは、マルチクラスをしてみるといいのではないだろうか。例えば、急所攻撃には武器制限やその他の装備制限が無いので、ローグ/ファイターのマルチクラスで、命中率と防御力を補ったキャラが作れる。ローグ/レンジャー二刀流スタイルもオススメだ。急所攻撃はそれぞれ別の攻撃ロールを使った攻撃に乗るので、二刀流と非常に相性がよい。前衛の硬いファイターの後ろにコソッと回り込んで、二刀急所攻撃……え? なんか卑怯くさい? じゃあ、バーバリアン/ローグのマルチクラスで、激怒急所攻撃……スマートじゃないなあ(笑)

次は武器と特技の選択で「軽戦士らしさ」を出していこうと思う。ちまたにはビキニアーマーにグレートソードの美少女剣士がいいですとかいう人もまだいるかも知らんが、ぶっちゃけ、hpが高いバーバリアン以外で両手武器や、《強打》系列のような特技を取得するのはオススメできる行為では無い。重戦士にとっても軽戦士にとってもACが重要であることはすでに述べた。そして、ACを鎧に頼れない軽戦士にとって、特技によるAC上昇は死活問題なのである。
まずは《Dodge/回避》。効果は地味だが、ここから派生していく特技が便利である。《回避》の上位特技には《Mobility/強行突破》と《Spring Attack/一撃離脱》がある。《一撃離脱》までとるのはもったいない場合もあるが、《強行突破》はD&D3.5版の最大の脅威の一つである機会攻撃*8に対し、+4もの回避ボーナスを得られるというものである。移動の際の機会攻撃に対してしか発動しないが、一気に敵陣奥まで切り込んでいけるし、ローグが敵の背後に回り込むのにも使える。
次に、《Expertise/攻防一体》。知力13が条件にあるのがネックだが、攻撃ロールを落としてACを上昇させることができる。しかも、「防御的戦闘」の戦闘オプションと効果が累積する。この組み合わせによって、1レベルキャラでもACに+3*9することができる。《回避》と組み合わせると単一の目標に対してはAC+4である。これは、「防御専念」のオプションをとった際のボーナスと同値である。防御専念してしまったら攻撃は出来ないが、防御的戦闘を行えば一応攻撃は出来る。この、出来ると出来ないの差は以外に大きい。《攻防一体》の上位特技には凶悪な《足払い強化》などもある。
忘れちゃいけない《Weapon Finesse/武器の妙技》。これはACを直接に上げる特技では無いが、ACを上げるために高い値を敏捷力を割り振ったキャラは、筋力にまで十分な値を回せないこともある。そんなとき、この特技があると攻撃ロールの基本値に敏捷力ボーナスを足せるようになるので、攻撃をヒットさせやすくなる。ダメージボーナスは相変わらず筋力ベースなのは致し方ないが、ローグなどは急所攻撃による追加ダメージの比率が筋力ボーナスより大きくなりがちなので、これをとると有効な場合が多い*10

基本ルールでできるのはこれぐらいだろうか。あとは、ファイター、バーバリアン、ローグ、レンジャーの混ぜ具合で変わってくると思う。上級クラスやサプリに載ってる追加クラスを含めるともっと色々なバリエーションが出てくるが、それは別の機会に。

*1:まあD&D3.5版的にはバーバリアン

*2:ダメージ減少能力が無ければ

*3:AC以外に入るボーナスは制限されないので注意。本当に重装備推奨ゲームだ。序盤はね。

*4:ヘヴィ・シールド装備/タワー・シールド装備

*5:タワー・シールドはファイターのみ

*6:具体的には、最低でも+2ボーナスくらい

*7:グレートソードかグレートアックス、もしくはスパイクト・チェイン

*8:隙を見せたり横を通り抜けようとすると殴られる

*9:ただし攻撃には−5

*10:前提条件が基本攻撃ボーナス+1なので、1レベルローグではとれない。注意。